AALAフォーラム2022(第30回)

第30回AALAフォーラム (AALA Forum 2022) プログラム

「アジア系アメリカ文学研究とトランスボーダー性/オリエンタリズム――村上春樹と小野姉妹を中心に」

<フォーラム趣旨説明>

 これまでアジア系アメリカ文学研究は様々な理論・方法論を取り入れることによって発展してきたが、そうした理論・方法論を従来の研究対象(狭義の「アジア系アメリカ文学」)から広げて適用することは可能であろう。今回のフォーラムでは、アジア系アメリカ文学研究の中で培われてきた「トランスボーダー性」や「オリエンタリズム」というパースペクティヴに拠って、村上春樹と小野姉妹という日本を代表して世界的に活躍する作家・アーティストについて考察したい。ひいては、この試みによってアジア系アメリカ文学研究の枠組を拡大し、研究内容を深化させることを目指している。(山本秀行)

日時:2022年9月25日(日)9:50~16:10
会場:早稲田大学早稲田キャンパス11号館4階第4会議室
*当日キャンパス内には案内板等のご用意はございません。正門・南門等より11番の校舎までお進みください。
キャンパスマップ

9:30 ~ 9:50  受付
9:50 ~ 10:00 開会の辞 山本秀行(AALA会長:神戸大学)

10:00 ~ 12:00
講演「副業としての翻訳家: 村上春樹から始まった20年を振り返って」
  講師:辛島デイヴィッド(早稲田大学)
  司会:麻生享志(早稲田大学)

ミニ・シンポジウム「トランスボーダー文学としての村上春樹」
  発表者:仁平千香子(山口大学)
  山本秀行(神戸大学)

12:00 ~ 13:00  昼休み(*下記注意事項をご確認ください。)

13:00 ~ 13:30  総会

13:30 ~ 16:00
シンポジウム「アジア系アメリカ文学とオリエンタリズム――小野姉妹の功績を中心に」
  司会・講師:牧野理英(日本大学)
  講師:田ノ口誠悟(日本学術振興会特別研究員PD)、矢口裕子(新潟国際情報大学)、松川祐子(成城大学)

16:00 ~ 16:10  閉会の辞

* 感染症対策から、構内でのマスクの着用をお願いいたします。また、会場での飲食は、水分の補給のみでお願いいたします。当日キャンパスではご昼食等の提供はございません。各自ご用意いただき、キャンパス内の認められた場所での黙食をお願いいたします。

[登壇者プロフィール・発表概要等]

講演副業としての翻訳家: 村上春樹から始まった20年を振り返って

[講演者紹介] 辛島 デイヴィッド(David Karashima)先生

1979年東京都生まれ。作家・翻訳家。現在、早稲田大学国際教養学部准教授。タフツ大学(米)で学士号(国際関係)、ミドルセックス大学(英)で修士号(文芸創作)、ロビラ・イ・ビルヒリ大学(西)で博士号(翻訳・異文化学)取得。日本文学の英訳や国際的な出版・文芸交流プロジェクトに幅広く携わる。2016年4月から2017年3月まで、NHKラジオ「英語で読む村上春樹」講師もつとめた。主な著作として、『Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち』(みすず書房、2018)、『文芸ピープル―「好き」を仕事にする人々』(講談社、2021)、「インターセクションズ」(『すばる』2022年5月号掲載)などがある。

ミニ・シンポジウム「トランスボーダー文学としての村上春樹」

[ミニ・シンポジウム概要]

 本ミニ・シンポジウムでは、村上春樹研究の著書や論文を出版されている辛島デイヴィッド先生を囲んで、2名の発表者(山本および仁平先生)が「トランスボーダー文学としての村上春樹」という観点から、それぞれの観点・テーマから発表を行う。その後辛島先生からコメントや質問をいただいた後、フロアの会員の方々も交え、ラウンドテーブル・ディスカッションを行う。村上春樹の母校であり、また、2021年10月に国際文学館(村上春樹ライブラリー)が開館したことが話題になった早稲田大学において開催される本ミニ・シンポジウムで、「トランスボーダー文学としての村上春樹」という新たな姿を浮かびあがらせることができたら幸いである。(山本秀行)

[ミニ・シンポジウム 発表要旨]

1. 「国境を越えた共感:村上春樹の国際的人気の理由を考える」 仁平千香子(山口大学)
 村上春樹は国内外で多くの読者を獲得してきたが、国内の文学研究者や文芸評論家からの意見はデビュー当時から変わらず厳しい。ファンタジー要素が強いことや日本の社会問題や歴史に直接切り込まないスタイルは、逃避的と批判されたり、作者の日本人としての意識の希薄さと判断されたりしてきた。これらの批判的意見の背後には、「理想的な(純)文学のあり方」というある種の定型が固定化され共有されていると考えられるが、一方で読者の根強い人気は否定できるものではなく、また見過ごすべきでもない。また日本文学の海外受容に関して言えば、谷崎や三島、川端の読者はいわゆる「伝統的日本」を求めてこれらの作品を読む傾向があったのに対し、村上の読者は日本について知ろうと村上作品を読むことはない。そこには文化的差異を越えた共感があり、それが読者とある種の化学反応を起こしていると考える方が自然である。本発表では、文化的特殊性や時代的特殊性を越えて読者に訴える村上作品の特徴について考えたい。

2.「村上春樹「ドライブ・マイ・カー」とその映画版におけるインターテクスト的トランスボーダー性」 山本秀行(神戸大学)
 濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)は、2021年度アカデミー賞国際長編映画賞を受賞するなど、世界的高評価を受けた。原作である村上春樹の同名の短編(2013年初出)のタイトルはThe Beatlesの曲‟Drive My Car”(1965)に由来し、主人公の名前の家福(Kafuku)は2002年の小説『海辺のカフカ』の主人公の名前、あるいはその由来となっているFranz Kafukaを想起させるなど、他作品とのインターテクスト性によって、本作品のトランスボーダー性が補強されている。妻を亡くしたベテラン俳優の主人公家福が、愛車Saabの運転手として雇った無口で影のある若い女性みさきとの交流を通して人生の意味を模索するというメイン・プロットに、アントン・チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』の韓国人製作者による多言語上演に主人公が監督(兼俳優)として関わり成功させるというインターテクスト的サブ・プロットが加わった映画版では、世界的アピール力を備えたトランスボーダー性がより顕著である。本発表では、こうした原作短編と映画版におけるインターテクスト的トランスボーダー性について詳細に検討したい。

シンポジウム「アジア系アメリカ文学とオリエンタリズム――小野姉妹の功績を中心に」

[シンポジウム概要]

 本シンポジウムの主旨は、第二次世界大戦前後に日本に生まれ、その後国家的概念から大きく逸脱して世界をかけめぐることになる小野姉妹―オノ・ヨーコ、そして小野節子―の60年代、70年代の功績に着目し、彼らのオリエンタリズムに対する視点がいかにアジア系アメリカという領域を再定義していたのかという問題を議論するというものである。
 オノ・ヨーコとは、反戦運動や、Nutopia設立といったトランスボーダーな平和主義を前面に掲げ、常に英米社会を挑発し続けた日本出身の前衛芸術家である。1969年にジョン・レノンとセンセーショナルな形で結婚式を挙げたことから、ともすれば「レノンの妻」という立ち位置ばかりが注目されがちであるが、実際には日本にいた頃から、斬新な芸術的手法と大胆なる行動力をもって活動し続けた人物である。ちなみに日系アメリカ作家カレン・テイ・ヤマシタは最新作『三世と多感(Sansei and Sensibility)』(2020)所収の短編「ボルヘスとわたし(“Borges and I”)」において、オノ・ヨーコとレノンの相互的かつ対等なる関係性を描いている。
 一方小野節子という名前からオノ・ヨーコの妹という血縁関係を見出すことのできる人間はいないだろう。この人物の背景を見てみると、そこには太平洋戦争とともに生まれ、その後芸術と経済といった相異なる分野を極め、全世界を駆け巡った類まれなる国際人の姿をみることができるからだ。その人生には芸術家と起業家の接点ともいえるダイナミックな創造力が顕在化されている。70年代にスイスのジュネーブ大学大学院で執筆した博士論文には、オリエンタリズムという概念に正面から切り込み、そこから新たな視点を見出していた小野の慧眼が伺える。
 本シンポジウムでは、田ノ口氏、矢口氏、そして松川氏の論考をベースに、オノ・ヨーコと小野節子の類稀なる才能が、オリエンタリズムというテーマを軸にどのように展開していったのかを分析していきたい。(牧野理英)

[シンポジウム発表要旨]

1.「小野節子とラフカディオ・ハーン」 牧野理英(日本大学)
 小野節子の人生とその博士論文が示すのは、オリエンタリズムという概念に対し真正面から取り組んだ日本人の研究者としての姿勢である。1941年、銀行家の小野英輔・磯子夫妻の次女として東京に生まれ、両親とともに5年間アメリカで生活したのち、60年代後半にはスイス・ジュネーブ大学付属高等国際問題研究大学院比較文学科に入学した小野は、72年にはこの博論を書き終える。この40年代生まれで70年代に活動を始める日本人の姿に筆者が注目している理由とは、激動の日本と共に生き、その国家性を国内のみではなくトランスナショナルな視点からとらえ、世界に発信するといった離れ業を70年代にスイスでやってのけたという点にあるだろう。国民意識に関して、そこで生まれ育った民族が特権をもって語るという形式に終始していたアメリカのエスニック文学が公民権運動から70年代にかけて注目されていた時代に、それをはるかに超越した形で、日本が欧米でどのように見られていたのかを逆の視点から追求していたのが小野節子であった。
 ピエール・ロティ(Pierre Loti)とラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn)の展開する日本論とは、それぞれ現代では日本研究およびオリエンタリズム研究において重要な文献であることはいうまでもないが、70年代初頭にこれを比較し、両作家の視点の限界を指摘することで、徳川政権の徳川慶喜の体現する姿に新しい日本人像を見出したのはおそらくこの小野がはじめであったと思われる。ここではこの博士論文を概観すると共に、筆者がこの論文を翻訳する上で感じた感想も交えながら、このエドワード・サイード(Edward Said)に先んじる小野のオリエンタリズム再考を、ラフカディオ・ハーンを起点に試みたいと思う。

2.「小野節子とピエール・ロティ」 田ノ口誠悟(日本学術振興会特別研究員PD)
 ピエール・ロティ(Pierre Loti, 1850-1923)は近代フランスの小説家、海軍士官であり、オペラ『蝶々夫人』の原作ともなった『お菊さん』(1887)など、自身の航海における異国の人々との交流をもとにした異国趣味的・エキゾティックな作品で広く知られている。しかしフランス文学においては、彼の作品はどちらかというと見聞録、旅行記に類するものとして扱われがちであり、その文学作品としての特色を真正面から考察する研究は多くないと言える。この点で、小野節子が1972年にジュネーブ大学大学院比較文学科に提出した博士論文『日本に対する西洋のイメージ:ロティとハーンを通して西洋人は何を見たのか』の意義は極めて大きかった。小野はそこで、『お菊さん』を始めとするロティの日本を主題とした作品を分析し、それらが「イメージ」という能動的な想像/創造の営為の所産であったことを示しているのである。本発表では、小野の分析を整理しつつ、その上でロティ作『お菊さん』を読解し、その独自のイメージの文学としての特性を明らかにする。その中で、ロティ作品の文学史的意義はもちろん、近年の文学研究においては単純な文化的偏見の具現として敬遠されがちな異国趣味文学やオリエンタリズム的作品を再評価する道筋も見えてくるだろう。

3.「オノ・ヨーコのオリエンタリスト/フェミニスト・パフォーマンス」 矢口裕子(新潟国際大学)
 パフォーマンス・アーティストとしてのオノ・ヨーコの出発点を、仮に1955年の Lighting Pieceに置くなら、そのちょうど60年後の2015年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で行われた個展、Yoko Ono: One Woman Show, 1960-71が初期作品を集中的に取りあげたのは、故なきことではない。第一に、それがまさに1971年、MoMAを想像上の会場として開催された架空の展覧会、One Woman Showへの、MoMAからの44年後の応答であったこと、第二に、何よりもまずジョン・レノン夫人としてオノを認識する世界に対して、レノン以前の前衛アーティスト、オノを提示すること、第三に、21世紀時点から見ても、初期作品にこそオノの可能性の中心があると考えられるためではないか。
 本発表では、玉虫厨子の捨身飼虎図にインスピレーションを受けたとされる、オノの代表的パフォーマンス作品Cut Piece (1964)を、オリエンタリズムとフェミニズムの交差路に立ちあがるものと捉え、フランス人アーティスト、ニキ・ド・サンファルのShooting(1961)と比較するとともに、3/11以降バトラーが展開する新しい肉体の存在論、抵抗としての被傷性の議論に接続する。さらに、2021年、ディズニー+で配信が開始された、解散間際のビートルズのドキュメンタリー映像Get Backに映しだされるオノの姿を、無作為の作為、沈黙のノイズ、可視と不可視のあわいを揺れ動く抵抗のパフォーマンスと捉え、それがある幼い娘を「叫ぶ少女」に変容させるまでを追う。

4.「パリンプセストとしてのThe Yoko Ono Project」 松川祐子(成城大学)
 アジア系北アメリカの文学と文化におけるオノ・ヨーコの影響力は計り知れないが、オノ・ヨーコが女性として、そして芸術家として、登場人物たちに大きな刺激を与えるアジア系北アメリカ文学作品をひとつ挙げるなら、韓国系劇作家ジーン・ユン(Jean Yoon, 1962- )のThe Yoko Ono Project(2000)を選びたい。カナダを拠点に女優としても活躍するユンは、この作品にオノ・ヨーコ自身の作品を多数組み込み、マルチメディア戯曲として完成せた。オノ・ヨーコの展覧会で出会う主人公のアジア系女性たち3人は、いくつものオノ作品を体験しながらアジア系北アメリカ人女性としてのアイデンティティとオノ・ヨーコとの複雑な関係について語り始める。
 本発表では、The Yoko Ono Projectでのオノ作品、オノ作品を体験する主人公たちとキャスト、主人公たちの追体験をしながら芝居に参加する観客、そしてThe Yoko Ono Project全体を鑑賞する観客や読者からなるパリンプセスト的重層性に着目する。可視化されたこれらの層でユンがオノの作品に重ねる現代アジア系北アメリカのコンテクストを通して、オノの先駆的ヴィジョンとユンの描くアジア系女性像と現代社会批判について探る。

参加申込方法および問合せ先 ※「アットマーク」はすべて半角の@にご変換ください。

  • 参加される方は、2022年9月16日(金)までに電子メールで必要事項(ご氏名、ご所属、ご連絡先等)を明記の上、事務局・深井(fukaiアットマークsuma.kobe-wu.ac.jp)までお申し込みください。
    Google Formからもお申し込み可能です。https://forms.gle/y8nmox7HoscD6xAd8
  • ご宿泊先については、各自でお申し込みください。なお、この時期は観光等で各施設の混雑が予想されることから、早めのご予約をおすすめいたします。
  • お問い合わせは、開催校担当者麻生まで電子メール(asoesアットマークwaseda.jp)にて、その他については学会事務局(hdyamamoアットマークlit.kobe-u.ac.jp)までご連絡ください。

AALA FORUM 2021(第29回)

2021年9月19日(日)

ウェブ開催(Zoom使用) 12:00頃からZoomミーティングを開始します。

12:15~13:00 総会

13:00~14:30 研究発表
仁平千香子(山口大学)
「二世の贖罪意識についての考察――John Okadaと森崎和江の比較から」
岸野英美(近畿大学)
「水資源の危機――Rita WongのUndercurrentを読む」

14:30~18:00 シンポジウム
「アジア系アメリカ文学の新世紀――21世紀初頭のピューリッツア賞・全米図書賞受賞作/ファイナリストを中心に」司会:古木圭子(奈良大学)
発表:
麻生享志(早稲田大学)
「ピューリッツァ賞への道――Viet Thanh Nguyen, The Sympathizerにおける「ヴェトナム」表象とアメリカ文学史」
牧野理英(日本大学)
「「島」と日系アメリカ――I Hotel(2010)を読む」
藤井爽(近畿大学)
「成功物語としてのMin Jin Lee, Pachinko
加藤有佳織(慶応義塾大学)
「容赦なく語ること――Hanya Yanagiharaの小説における暴力の表象」
志賀俊介(成蹊大学)
「故郷の影とともに――Jhumpa Lahiri, The Lowlandにみるインド系移民のアメリカ像」

会員以外の方で参加をご希望の場合は、事務局までご連絡ください。

AALA Forum 2019(第27回)

<日本語>

AALA30周年記念国際フォーラム
「アジア系(アメリカ文学)を世界文学の枠組で再配置リマッピングする」

日時:2019年9月28日(土)~ 29日(日)
会場:神戸大学六甲台第2キャンパス人文学研究科B棟3階B331教室

総合司会:牧野理英(日本大学教授)

第1日目  9月28日(土)
◇13:45~14:00 開会の辞 :山本秀行(AALA代表, 神戸大学教授)
◇14:00~17:30 基調講演:
「非人間的未来における人間――電脳コンピュ演算テーション、翻訳トランスレーション、『三体スリー・ボディ・プロプレム』」
講師:Prof. Wai Chee Dimock(Professor, Yale University)
特別ゲストコメンテーター:巽孝之 氏(慶應義塾大学教授)
ディスカッサント:
・松永京子(神戸市外国語大学准教授)
・Nathaniel H. Preston(立命館大学教授)
司会:古木圭子(京都先端科学大学教授)
◇18:00~20:00 懇親会  瀧川学術交流記念会館1階食堂
司会:渡邊真理香(高知工業高等専門学校講師)

第2日目 9月29日(日)
[9:00~10:00  総会(会員のみ)]
司会: 深井美智子(神戸女子大学[非])
◇10:00~14:30 国際シンポジウム:
 “Remapping Asian (American) Literature in the Framework of World Literature”
講師 :
・宇沢美子(慶應義塾大学教授)
 ““In the Mastery of the Fourth Dimension”: Reassessing Yone Noguchi’s Style of Literary Adaptation”
・Chih-Ming Wang(Research Fellow, Academia Sinica, Taiwan)
“Ethnic Realism and (Inter)National Allegory: From Talking to High Monks in the Snow to Terrace House Aloha State
・Lyle De Souza(Visiting Researcher, Kyoto University)
 “Translingual Triangulation: Code-switching, Translation, and Silence in Contemporary Canadian Nikkei Novels”
ディスカッサント:
・Ki Yoon Jang(Associate Professor, Sogang University, Korea)
・松本ユキ(近畿大学講師)
・Alina Elena Anton(神戸大学講師)
司会:牧野理英
[ランチョン[12:00~13:00 人文学研究科A棟1階学生ホール]を挟んで、ディスカッション、質疑応答]
◇閉会の辞: 植木照代(AALA初代代表, 神戸女子大学名誉教授)

主催:アジア系アメリカ文学研究会
共催:日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(B)「「トランスボーダー日系文学」研究基盤構築と世界的展開―「世界文学」的普遍性の探究」(研究代表者:山本秀行、研究課題番号19H01240、2019~2021年度)
後援:神戸大学大学院人文学研究科(「神戸大学文学部70周年創立記念事業」)

[基調講演者紹介]
ワイ・チー・ディモック先生はWilliam Lampson Professor of American Studiesとして、イェール大学で英文科教授を務められておられ、1976年にハーヴァード大学で学士号、1982年にイェール大学で博士号を取得されています。PMLAの編集委員などを歴任され、論文や記事が、Critical InquiryThe New York Times, The New Yorkerなどに掲載されています。ご著書Through Other Continents: American Literature Across Deep Time (2006)は、The Harry Levin Prize of the American Comparative Literature Associationほか、各賞を受賞されております。このアプローチが、ご編著書Shades of the Planet: American Literature as World Literature (2007)で展開されています。今回の基調講演では、劉慈欣 (Liu Cixin、リュウ・ジキン)の世界的に評価の高いSF作品『三体』(The Three-Body Problem)[邦訳書:早川書房]のKen Liuによる英語翻訳の問題などを世界文学的見地から講演いただく予定です。

[AALA代表からのメッセージ]
アジア系アメリカ文学研究会創設30周年を記念して開催される、この国際フォーラムは、(「アジア系(アメリカ)文学を世界文学の枠組で再配置リマッピングする」)という総合テーマのもと、基調講演者Wai Chee Dimock氏(イェール大学教授)、特別ゲストコメンテーター巽孝之氏(慶應義塾大学)をはじめ、国内のみならず、イギリス、台湾、韓国など海外からも著名な研究者たちがシンポジウムのパネリストやディスカッサントとして神戸に一同に会して、1日目基調講演、2日目国際シンポジウムと二日間にわたり開催します。長らくアジア系アメリカ人のアイデンティティ・ポリティクスの表象とみなされてきたアジア系アメリカ文学ですが、近年、アジア系アメリカ(・カナダ)英語文学のトランスボーダー性の顕著化、アメリカ(・カナダ)以外のアジア系英語文学の発達、アメリカ文学研究の学域を超えてアジア文学研究や比較文学研究など他の学域をも包含するようになったアジア系アメリカ文学研究の学域横断的展開などにより、従来の「アジア系アメリカ文学」という枠組で研究を展開することが困難になりつつあります。そうした喫緊の課題に対処すべく、本フォーラムでは、Wai Chee Dimock氏などが再理論化した「世界文学」(World Literature)という、より柔軟で包含的な枠組でアジア系(アメリカ)文学の再配置(remapping)を試みたいと思います。AALA会員や関係者はもとより、アジア系(アメリカ)文学に興味を持っている方々の多数のご参加を歓迎いたします。(山本秀行、AALA代表)

<English>

AALA 30th Anniversary International Forum
“Remapping Asian (American) Literature in the Framework of World Literature”

Dates:Sep.28-29, 2019
Venue:Room B331, Humanities Building in Kobe University 2nd Rokkodai Campus

Forum Moderator:Rie Makino (Professor, Nihon University)

Day One: September 28 (Saturday)
◇13:45~14:00 Opening Speech:Hideyuki Yamamoto (AALA President, Professor, Kobe University)
◇14:00~17:30 Keynote Lecture:
“Humans in a Non-Human Future: Computation, Translation, and The Three-Body Problem
Lecturer:Prof. Wai Chee Dimock (Professor, Yale University)
Special Guest Commentator:
Prof. Takayuki Tatsumi (Professor, Keio University)
Discussants:
・Kyoko Matsunaga (Associate Professor, Kobe City University of Foreign Studies)
・Nathaniel H. Preston (Professor, Ritsumeikan University)
Chair:Keiko Furuki (Professor, Kyoto University of Advanced Science)
◇18:00~20:00 Reception Dinner Dining Room in the 1st floor of Takigawa Memorial Hall:
MC:Marika Watanabe (Lecturer, National Institute of Technology, Kochi College)

Day Two:September 29 (Sunday)
[9:00~10:00 General Meeting of AALA (only for members)]
MC: Michiko Fukai (Kobe Women’s University)
◇10:00~14:30 International Symposium:
“Remapping Asian (American) Literature in the Framework of World Literature”
Lecturers:
・Yoshiko Uzawa (Professor, Keio University)
““In the Mastery of the Fourth Dimension”: Reassessing Yone Noguchi’s Style of Literary Adaptation”
・Chih-Ming Wang (Research Fellow, Academia Sinica, Taiwan)
“Ethnic Realism and (Inter)National Allegory:
From Talking to High Monks in the Snow to Terrace House Aloha State
・Lyle De Souza (Visiting Researcher, Kyoto University)
“Translingual Triangulation: Code-switching, Translation, and Silence in Contemporary Canadian Nikkei Novels”
Discussants:
・Ki Yoon Jang (Associate Professor, Sogang University, Korea)
・Yuki Matsumoto (Lecturer, Kindai University)
・Alina Elena Anton (Lecturer, Kobe University)
Chair:Rie Makino
[Discussions and Q&A will ensue Luncheon(12:00~13:00 at Student Hall, Humanities Building A]
◇Closing Speech: Teruyo Ueki (AALA Founding President, Professor Emeritus, Kobe Women’s University)

Hosted by AALA—Asian American Literature Association, Japan
Co-sponsored by JSPS Grant-in-aid for Science Research (B), 2019-2021 (19H01240, Hideyuki Yamamoto)
Supported by Kobe University Graduate School of Humanities as a Kobe University Faculty of Letters 70th Anniversary Event

[A Brief Introduction to Keynote Lecturer]
Professor Wai Chee Dimock is currently William Lampson Professor of American Studies, as well as Professor of English at Yale University. She earned her B.A. at Harvard University in 1976, and her Ph.D. at Yale University in 1982. She has served as editor of PMLA, and published her numerous articles in Critical Inquiry, the New York Times, the New Yorker, and the other prestigious academia journals and mass media. Her book,Through Other Continents: American Literature Across Deep Time (2006), received the Harry Levin Prize of the American Comparative Literature Association and the other awards. This approach in the book is further developed in a collaborative volume, Shades of the Planet: American Literature as World Literature (2007). This keynote lecture will discuss Ken Liu’s English translation of Liu Cixen’s Sci-fi novel The Three-Body Problem from the perspective of World Literature. (Mostly quoted from the Faculty page at Yale University Website)

[A Message from the President of AALA]
This International Forum, entitled “Remapping Asian (American) Literature in the Framework of World Literature,” will be held to celebrate the 30th anniversary of AALA(Asian American Literature Association, Japan). The 2-day international conference invites Prof. Wai Chee Dimock (Yale University) as the keynote lecture and Prof. Takayuki Tatsumi (Keio University) as the special guest commentator on the first day, and as the panelists and discussants at international symposium on the second day six distinguished scholars in Japan and overseas—USA, UK, Taiwan, and Korea. Asian American literary texts have been long-regarded as the representations of identity politics for Asian American writers, but recently, we should find more difficulties to discuss them in the confinement of “Asian American Literature.” It’s solely because of the more evident transborderness of Asian American/Canadian literature; the more expansive development of English-language Asian literature in the countries/areas other than the US and Canada; and the more interdisciplinary perspectives of Asian American literary studies which have expanded from American literary studies to Asian literary studies and comparative literary studies. In order to overcome the above-mentioned emergent problems, the Forum will endeavor to remap Asian (American) Literature in the more flexible framework of World Literature which has been re-conceptualized by Professor Wai Chee Dimock or other theorists. We will cordially welcome to the Forum not only AALA members and friends but any ones who share our interest in Asian (American) literature. (Hideyuki Yamamoto, President of AALA)

AALA Forum 2018(第26回)

「アジア系アメリカ文学におけるボーダーナラティブ」
“Border Narratives in Asian American Literature”

日時:2018年9月8日(土)、9日(日)
会場:早稲田大学(早稲田キャパス)
共催:早稲田大学大学院国際コミュニケーション研究科

会場の詳細:
9月8日(土)
 受付、開会の挨拶、オープニングセッション、シンポジウム:11号館4階第4会議室
 懇親会:大隈記念タワー15階「森の風」
9月9日(日)
 総会、特別講演:8号館3階308教室
 昼食会:グッドモーニングカフェ早稲田(新宿区西早稲田1-9-12)

第1日 Day 1
9月8日(土) September 8, Saturday
総合司会:池野みさお(津田塾大学)
13:30 ~ 14:00 受付                  
14:00 ~ 14:15 開会の挨拶:山本秀行(AALA代表:神戸大学)
14:15 ~ 15:15 Opening Session
Moderator: Takashi Aso(Waseda University) 
“Heterotopic Borderlands in Third Space−−and Oranges”
Edward Chan(Waseda University)
15:30 ~ 18:30 シンポジウム「アジア系アメリカ文学とボーダーナラティブ」
司会:牧野理英(日本大学)
パネリスト:
松川裕子(成城大学)
「イェローフェイスとホワイトウォッシング―ボストン美術館のキモノ・ウェンズデイズをめぐって」
杉山直子(日本女子大学)
「マキシン・ホン・キングストンのボーダー・ナラティブ『西遊記』の語り直しをめぐって」
松永京子 (神戸市外国語大学)
「「ボーダー」としての有刺鉄線表象—Silko, Kogawa, Kadohataの作品を中心に(仮)」
19:00 ~ 21:00 懇親会 司会:麻生享志(早稲田大学) 

第2日 Day 2
9月9日(日) September 9, Sunday
10:00 ~ 10:30 総会 司会:深井美智子(神戸女子大学 [非])
10:30 ~ 12:00 特別講演
「ケイコ・イトウ『わが上海: 1942-1946』を読む―—横浜正金銀行と日系社会」
講師:巽孝之(慶應義塾大学教授)
司会:山本秀行(AALA代表:神戸大学)
12:00 ~ 12:10 閉会の辞 小林富久子(AALA前代表:城西国際大学)
12:30 ~ 13:30 昼食会  進行:麻生享志 

<登壇者プロフィール・発表概要等>
1. Opening Session:Edward Chan 
Profile: Originally from California, Edward K(uninobu) Chan is the son of Japanese and Chinese-Mauritian immigrants and has lived in the states of New York, Indiana, and Georgia, as well as in Saudi Arabia, before coming to Japan in 2011―all of which have permanently warped his sense of time, place, and culture. He has taught at several universities in the U.S. and Japan, and his research and teaching interests include issues of race in 20th/21st-century U.S. American literary, film, and popular culture, as well as transnational perspectives on U.S. American culture. He is currently professor in the Faculty of Letters, Arts & Sciences at Waseda University. Representative publications include “Inhabiting the Space of the Other: Josef von Sternberg’s Anatahan” (2017), The Racial Horizon of Utopia: Unthinking the Future of Race in Late-Twentieth-Century American Utopian Novels (2016), “Un-canning the Canny: McDonald’s Japan and the Mr. James Saga” (2014), “Narrating Social Space: Ceremony, Utopian Desire, and Cultural Difference” (2012), “Kurosawa Akira’s Stray Dog (Nora inu) and Cross-cultural Interpretation” (2011), “Food and Cassettes: Encounters with Indian Film Song” (2008), “Utopia and the Problem of Race: Accounting for the Remainder in the Imagination of the 1970s Utopian Subject” (2006), and “(Vulgar) Identity Politics in Outer Space: Delany’s Tritonand the Heterotopian Narrative” (2001).

Abstract: In this paper, I survey various conceptual models for border spaces, where cultures, races, ethnicities, genders, sexualities, class, and other identities come into contact: French philosopher/historian Michel Foucault’s concept of heterotopia; Chicana poet, essayist, and theorist Gloria Anzaldúa’s borderlands; postcolonial theorist Homi Bhabha’s “third space”; and urban geographer Edward Soja’s “thirdspace.” Each of these formulations gives us a way into understanding the intersections between peoples, not only in terms of cultures and races but also spatiality, identity and affect, epistemes, and cognitive mapping. 
After constructing a bricolage from this survey, I will perform a reading of Karen Tei Yamashita’s Tropic of Orange (1997) as a paradigmatic border-crossing narrative along the lines of Leslie Marmon Silko’s Almanac of the Dead (1991), among others. Yamashita is herself an interesting case study regarding cultural intersections given her personal experiences in California, Japan (including her junior year at Waseda), and Brazil. Tropic of Orange provides a fascinating picture of the cross-border relations primarily along the US-Mexican border but includes a host of other border-crossing identities that inhabit the Los Angeles area. 

2. シンポジウム概要(牧野理英)
今日のアメリカ文学研究の中でも、アジア系ほどボーダーに関して様々に論じられうる分野はないだろう。その多様な民族的背景はもとより、ボーダーという言葉の含意が、文学作品の解釈を玉虫色に変化させる。本シンポジウムの目的は、ボーダーという言葉を発表者それぞれのユニークな解釈によって切り込んでいくというものである。松川氏は、アジア系と白人という人種的境界線を越えるパフォーマンス ― イエローフェイスとホワイトウォッシング ―から、杉山氏はキングストンの『チャイナメン』を中国の伝記小説『西遊記』の語り直しとして国家的概念の境界線を越える行為に連関させることで、松永氏はシルコ―、コガワ、そしてカドハタの作品における有刺鉄線の表象に着目し、その境界線の歴史的暴力の交錯から、アジア系アメリカ文学の新しい諸相を提示する。

パネリスト発表要旨
・ 松川裕子「イェローフェイスとホワイトウォッシング―ボストン美術館のキモノ・ウェンズデイズをめぐって」
2015年の夏、ボストン美術館でのモネの「ラ・ジャポネーズ」に描かれている内掛けを試着するイベントに対して、文化の横領だとして抗議が続いた。本発表では、そこで巻き起こった人種の表象に関する議論をイェローフェイス(アジア系でない俳優がアジア系に化けること)とホワイトウォッシング(本来有色人種の俳優が演じるはずの役を白人俳優が演じること)の作り出すボーダー・ナラティヴと結び付けながら考察する。
・ 杉山直子「マキシン・ホン・キングストンのボーダー・ナラティブ『西遊記』の語り直しをめぐって」
キングストンのI Love a Broad Margin to My Lifeでは、前2作(Tripmaster Monkey: His Fake Book 及び The Fifth Book of Peace)の主人公ウィットマン・ア・シンが再び登場し、中国への旅に出る。三作を通じて前提とされる『西遊記』の枠組が、近代的な意味での「国家」概念を批判的に見直すために用いられているのではないかという仮説を、三作における様々な国境をめぐる言説、特にウィットマンの中国での体験に注目することにより検証したい。
・ 松永京子「「ボーダー」としての有刺鉄線表象—Silko, Kogawa, Kadohataの作品を中心に(仮)」
有刺鉄線はしばしば、近代戦や留置・隔離など、二〇世紀の暴力を喚起する効果的なイメージとして文学作品のなかで用いられてきた。本発表では、SilkoのCeremony (1977), Joy KogawaのObasan (1981), Cynthia KadohataのWeedflower (2006) における有刺鉄線の表象に注目しながら、植民地主義、日系収容所、ウラン鉱山といった異なる歴史や記憶が、それぞれの作品のなかでどのようにクロスしているのか(あるいはしていないのか)を考察する。

3. 特別講演講師プロフィール 
巽孝之:慶應義塾大学教授。アメリカ文学専攻。コーネル大学大学院修了(Ph.D. 1987)。日本英文学会監事、アメリカ学会理事、日本アメリカ文学会会長等を歴任。現在、北米 Journal of Transnational American Studies 編集委員。主な業績に『ニュー・アメリカニズム――米文学思想史の物語学』(青土社、1995年度福沢賞)、『モダニズムの惑星――英米文学思想史の修辞学』(岩波書店、 2013年)、『盗まれた廃墟――ポール・ド・マンのアメリカ』(彩流社、2016)、Full Metal Apache : Transactions between Cyberpunk Japan and Avant-Pop America (Duke UP, 2006, The 2010 I.A.F.A. Distinguished Scholarship Award)、 Young Americans in Literature: The Post-Romantic Turn in the Age of Poe, Hawthorne and Melville (彩流社、2018)、“Literary History on the Road: Transatlantic Crossings and Transpacific Crossovers” (PMLA 119.1 [January 2004])ほか多数。